NICTは、テラヘルツ波用の周波数計測システムを開発し、0.1 THz~2.8 THzにおいて高精度なテラヘルツ周波数カウンタを実現した。
今回、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICY)により開発された半導体超格子ハーモニックミキサを用いたテラヘルツ波用周波数計測システムは、テラヘルツ帯をBeyond 5G / 6Gにおける新たな電波資源として有効活用するための計量標準技術である。
小型周波数カウンタの性能は世界トップ
いわゆる電波と光波の中間に位置する遠赤外光の領域であるテラヘルツ帯は未開拓周波数領域とも呼ばれており、常温動作する検出器の開発が求められてきた。開発のブレイクスルーが起きることにより、高速無線通信、非破壊検査やセキュリティ、生物や医療、電波天文などへの応用が期待されてきた。
従来のハーモニックミキサやダウンコンバータを使用したミリ波測定方法は、広帯域信号の測定においていくつかの課題があったが、今回のテラヘルツ周波数カウンタの測定性能は、電波の上限帯域を網羅する広帯域(0.1THz~2.8THz)において計測制度16桁に到達する事を実証した。
今回、半導体超格子ハーモニックミキサを採用したことで可能になった事は下記の通り。
- 超短パルスレーザーが不要となり、装置の小型化・運用コストの削減
- マイクロ波標準信号を直接入力できる
- レーザーに関する専門知識がなくても操作できる
- より信頼性の高いテラヘルツ周波数の較正
広帯域で計測制度16桁に到達したテラヘルツ周波数カウンタの性能は、小型かつ室温動作するテラヘルツ周波数カウンタの動作帯域幅と計測制度として、ともに世界トップである。
Beyond 5G/6G時代の様々なニーズに応えるため、技術基盤を確立へ
今回開発されたテラヘルツ周波数カウンタは、小型化と操作性の良さを実現し、実用化へ大きく前進した。
次世代の情報通信基盤であるBeyond 5G/6Gでは、現在利用されているマイクロ波・ミリ波だけでなくテラヘルツ帯を活用することで、広域帯幅を活かした超高速無線通信を可能にし、現実空間と仮想空間の関係を高度に統合・制御される事なども期待されている。
NICTは、この技術のグローバルな普及を視野に入れながら、まずはBeyond 5G/6G世界の実現を目指すということだ。これが実現されれば、情報通信技術による革新と言える。新たな電波資源としてテラヘルツ帯を活用していくため、計量標準技術の開発、周波数標準器の較正サービスの拡大に取り組んでいく。特に、電波産業などの様々なニーズに対応・貢献していきたいという事である。