2021年6月、国立研究開発法人情報通信研究機構と住友大阪セメント株式会社、学校法人早稲田大学は、ミリ波無線受信機を簡素化する光・無線直接伝送技術についての開発の結果について発表した。
ミリ波信号の光ファイバへの直接伝送に成功
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長:徳田 英幸)、住友大阪セメント株式会社(住友大阪セメント、代表取締役 取締役社長:諸橋 央典)及び学校法人早稲田大学(早稲田大、理事長:田中 愛治)によって今回開発され、発表されたミリ波受信技術は従来の技術を大幅に更新する高速のミリ波無線信号を光ファイバに直接伝送することを実現した。
また、今回の技術を利用することでミリ波無線受信機の簡素化も可能になる。
5Gの時代において今後多数設置されることが予想される無線アンテナ局の消費電力の削減、そして大幅なコスト削減が期待できる。
5Gが導入され、高速での通信が実現する一方で無線送受信機自体の消費電力の大幅な増加は従来より懸念されており、更に多数の無線アンテナ局を設置する必要も提唱されていた。
三者での共同開発
今回三者が開発した二点の要素技術はミリ波無線受信機に関するもので、光ファイバに受信した高速ミリ波無線信号を光信号に変換する際の負担を大幅に軽減するとともに、更なる高速化を実現した。
今回開発された要素技術は次の2点である。
- ・強誘電体電気光学結晶(ニオブ酸リチウム)を利用した高速光変調器。これにより無線信号の光、無線変換が可能となる。
- ・無線変換デバイスから発出される、光信号を光ファイバに直接伝送する無線技術。信号周波数を変換することができるため、ミリ波無線信号の光領域での周波数変換も可能となるという。
今回開発されたこの2つの技術を組み合わせることにより、無線信号の光信号への直接のスムーズな変換が可能となった。
本システム開発により期待されること
本成果はミリ波受信機内における消費電力の大きい電子デバイスを必要としなくなるので、まず構成の簡素化が期待できる。
また、5Gの時代において重要視され、拡大が予測される無線アンテナ局の低消費電力化も可能にする。消費電力の低下によりコスト削減も可能期待できるという。
今後は、今回の開発により確立された光・無線相互変換デバイス、光ファイバ無線技術を活用し、5Gが更なる拡大を推し進める時代における無線システムに対応するための更なる高周波化、そして高速化及び低消費電力化を目指した技術検討を進めるとのことだ。